誠-巡る時、幕末の鐘-
「やれやれ、兄に向かってその口の聞き方とは。昔は兄上、兄上と可愛かったのに」
「黙れっ!!お前なんか兄じゃない!!お前は、お前は……」
次の瞬間、珠樹の口から信じられない事実が告げられた。
「父上と母上を見殺しにした!!」
…………………え??
嘘でしょう??
だって……あの時。
…………………あの時??
「風戸の長老達が話しているのを偶然聞いたんだ。その事実をっ!!」
あの時……炎に包まれた屋敷。
心配になって中へ入って……。
私は………何かを見た。
……………何を??
「奏、思い出そうとしてるの??………思い出さない方が奏のためなのに」
彼方はすっと手を差し出した。
その手を奏は見つめた。
凝視したと言うほうが正しいかもしれない。