誠-巡る時、幕末の鐘-



……………あ…。




奏の脳裏に浮かんだのは、燃え盛る炎。


そして…………先程同様、酷薄な笑みを浮かべた彼方の姿。


その前には……………両親が床に臥していた。




………思い出した。


兄様、笑ってた。


父様と母様を見て。


助け起こそうともせずに。




一つ思い出すと、後は走馬灯のように頭の中に浮かび上がってきた。


一度目を伏せ、再び開いた時、瞳は強い光を持っていた。




「兄様、私を……ううん。私達を騙したの??」




風戸の事件の時、彼方はミエ達に雷焔の里崩壊のあらましを語った。


それも嘘だったのだろうか。




「騙してないよ。仇はとったっていっただろう??」


「違う。何で、何で見殺しにしたかって意味よ!!」




奏は怒りを隠すことなく前面に押し出した。


握られた拳がわなないている。



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