誠-巡る時、幕末の鐘-



「本当なら今頃、もうとっくに奏はそれを飲んで眠っているはずなのに。計画が台無しだ。おかげで大分やる事を増やさなきゃいけなかったよ」


「兄様………まさか」




奏の頭によぎった考えは、彼方の満面の笑みによって肯定された。


そう。


自分達は、まんまと踊らされていたのだ。


雷焔彼方という男の手の平の上で。




「近衛の息子が奏を襲うのは計算外だったけどね」




確かによく考えてみればおかしかった。


何故、レオン様の宝物庫に小物が忍び込めた??


何故、人間が鬼切を持っていた??


何故、鬼切で力が失われているはずなのに“彼方には”すぐに見つけることができた??


何故、彼方と最後にいた時の記憶から掻き消えていた??


そもそも………何故、今妖が大量発生した??


つなぎ合わせれば、答えはするすると簡単に一つになった。


この場にいる全員が同時に理解した。




一連の黒幕はこの男だと。



< 951 / 972 >

この作品をシェア

pagetop