誠-巡る時、幕末の鐘-
「本当なら今頃、もうとっくに奏はそれを飲んで眠っているはずなのに。計画が台無しだ。おかげで大分やる事を増やさなきゃいけなかったよ」
「兄様………まさか」
奏の頭によぎった考えは、彼方の満面の笑みによって肯定された。
そう。
自分達は、まんまと踊らされていたのだ。
雷焔彼方という男の手の平の上で。
「近衛の息子が奏を襲うのは計算外だったけどね」
確かによく考えてみればおかしかった。
何故、レオン様の宝物庫に小物が忍び込めた??
何故、人間が鬼切を持っていた??
何故、鬼切で力が失われているはずなのに“彼方には”すぐに見つけることができた??
何故、彼方と最後にいた時の記憶から掻き消えていた??
そもそも………何故、今妖が大量発生した??
つなぎ合わせれば、答えはするすると簡単に一つになった。
この場にいる全員が同時に理解した。
一連の黒幕はこの男だと。