誠-巡る時、幕末の鐘-
「言っておくけど、今回の猫は違うよ。あれは僕にも予定外。まぁ、結果良ければ全てよしだけどね」
「兄様」
「うん??」
奏は静かに兄を呼んだ。
「私は桜花の仇をうつことに邁進していました。ですが………それ以上にあなたが憎くてたまりません」
そして再び兄の名を口にした。
「彼方兄様を兄様と呼ぶことは二度とないでしょう。…私の大切な人達まで駒として利用するなんて」
「奏も??珠樹には慣れたけど奏のは堪えるな」
全くそうは思っていないような飄々とした感じだ。
この男は昔から確かに感情が読めなかった。
幼かったからだけではないだろう。
「眠りを止める薬は??」
「ないよ。そんなもの。僕の準備が終わるくらいに目が覚めてくれたら嬉しいなぁって思ってただけだから」
準備??
何の??
余りにも身勝手な言葉に、怒りを抑えられず、土方達はバッと彼方に向かって切りかかった。