誠-巡る時、幕末の鐘-
それを身軽に避け、木の枝にひらりと跳躍した。
「危ないなぁ。……じゃあ、奏。またね」
『待てっ!!』
だが、彼方が待つはずもない。
闇夜に溶け込んで見失ってしまった。
「くそっ!!」
「どうすんだよ!!」
「奏、薬作れない??」
珠樹が心配そうに覗きこんできた。
奏はフムと顎に手を当て、考えこんだ。
「分からない。材料も分からないし」
「どうすんだよ〜??」
藤堂が眉をハの字に動かし、髪をかきむしった。
他のみんなも鎮痛な面持ちだ。
「やれるだけのことはするよ。私だってあの人の手の平で転がされるなんてもうまっぴら」
「奏…」
「さ、戻ろう。あ……万が一の事があります。澪ちゃんには言わないでください。響には爺から」
「分かりました」
「あぁ」
「うん」
「分かっている」
奏はフワッと笑みを浮かべ、屯所へと足を向けた。
もちろん、両側にはしっかりと沖田と珠樹がはりついて。