誠-巡る時、幕末の鐘-



「…………あ、響。あの男見つけた??」


「あ!!いえ………まだ、全然」




響は眉を下げた。


ここの所、たくさんの事がありすぎてそれどころではなくなっていた。


だから人探しも断念せざるを得なかった。




「見つけにいこう」




奏は即座に腰を上げた。


響もそれに着いていこうと立ち上がりかけた時…。




「その必要はない」




襖がすっと開き、千早と、紫翠、鈴が入ってきた。




「どういうこと??」


「その男なら見つけて送ったぜ。明日の夜、母親を連れてくるってさ」


「千早君、紫翠さん、鈴さん!!ありがとうございます!!」




響は深々と頭を下げた。


三人共疲れ切った顔をしているが、手を上げ、それに答えた。




「いや、響には世話になっている。その礼だ。それに迷い人を探すくらい詮無きこと」


「それより泊まらせてくれ」


「疲れた。歩けん。寝る」




そのまま紫翠はごろりと寝転んでしまった。


誇り高い鬼一族の当主とは思えない行動だ。


すぅすぅと規則正しい微かな寝息が聞こえてきた。



< 955 / 972 >

この作品をシェア

pagetop