誠-巡る時、幕末の鐘-
「…………あ、響。あの男見つけた??」
「あ!!いえ………まだ、全然」
響は眉を下げた。
ここの所、たくさんの事がありすぎてそれどころではなくなっていた。
だから人探しも断念せざるを得なかった。
「見つけにいこう」
奏は即座に腰を上げた。
響もそれに着いていこうと立ち上がりかけた時…。
「その必要はない」
襖がすっと開き、千早と、紫翠、鈴が入ってきた。
「どういうこと??」
「その男なら見つけて送ったぜ。明日の夜、母親を連れてくるってさ」
「千早君、紫翠さん、鈴さん!!ありがとうございます!!」
響は深々と頭を下げた。
三人共疲れ切った顔をしているが、手を上げ、それに答えた。
「いや、響には世話になっている。その礼だ。それに迷い人を探すくらい詮無きこと」
「それより泊まらせてくれ」
「疲れた。歩けん。寝る」
そのまま紫翠はごろりと寝転んでしまった。
誇り高い鬼一族の当主とは思えない行動だ。
すぅすぅと規則正しい微かな寝息が聞こえてきた。