誠-巡る時、幕末の鐘-



―――次の日




日が暮れ、夜の帳が下り始めた。


辺りは暗くなってきている。


近づいてくる衣ずれの音に、珠樹がいち早く反応した。




「来たみたいだね」




つーっと広間の襖が開かれ、目の前には予想どおりの人物。


そして………。




「揃っているようだな」


「み、澪ちゃん!!?」




見た目かなり……いや、正直に言おう。


まさに鬼が澪ちゃんを抱っこしていた。


それにかなーり驚いた土方達。




「お、お前、何に抱きついてやがる!!?」


「こ、こっちにこい!!」


「だいじょうぶだよ。うしさんとうまさん、やさしいもん」


「うしさん、うまさんって……牛頭、馬頭のことだったのか!!」




牛頭、馬頭とは地獄の獄卒。


冥府の官吏である小野篁の部下だ。


体は人間のものだが、頭がその名を表している。


いつもは金棒持って死者を取り締まっているはずなんだが。




「あいつ、やっぱり大物だよ」


「あぁ、内親王だもんな」


「大物だ」


「内親王じゃなくても抱きついてるって時点で大物でしょ」




沖田までも若干顔を引きつらせている。



< 957 / 972 >

この作品をシェア

pagetop