誠-巡る時、幕末の鐘-
―――次の日
日が暮れ、夜の帳が下り始めた。
辺りは暗くなってきている。
近づいてくる衣ずれの音に、珠樹がいち早く反応した。
「来たみたいだね」
つーっと広間の襖が開かれ、目の前には予想どおりの人物。
そして………。
「揃っているようだな」
「み、澪ちゃん!!?」
見た目かなり……いや、正直に言おう。
まさに鬼が澪ちゃんを抱っこしていた。
それにかなーり驚いた土方達。
「お、お前、何に抱きついてやがる!!?」
「こ、こっちにこい!!」
「だいじょうぶだよ。うしさんとうまさん、やさしいもん」
「うしさん、うまさんって……牛頭、馬頭のことだったのか!!」
牛頭、馬頭とは地獄の獄卒。
冥府の官吏である小野篁の部下だ。
体は人間のものだが、頭がその名を表している。
いつもは金棒持って死者を取り締まっているはずなんだが。
「あいつ、やっぱり大物だよ」
「あぁ、内親王だもんな」
「大物だ」
「内親王じゃなくても抱きついてるって時点で大物でしょ」
沖田までも若干顔を引きつらせている。