誠-巡る時、幕末の鐘-
「だいぶ時間がかかったが約束は約束だ」
篁がパチりと指を鳴らすと、ゆらゆらと空気が歪み始めた。
ぼんやりと、だが確実に人型に変わっていく。
「珠樹様、奏様。お久し振りでございます」
形が定まる頃には、ありし日の優しげな笑みを浮かべた輝耀がいた。
「輝耀!!」
「大きくおなりになられましたね」
「…………母……様……??」
「響………おいでなさい」
「…………っ!!!母様っ!!」
奏達はどいてやり、響は母親の手に抱かれた。
響の綺麗な涙が頬を幾筋も流れ落ちた。
「あなたも大きくなったわね。安心したわ」
「はいっ!!はいっ!!」
うんうんと頷く響の頭を優しく撫で、微笑む姿はまさしく母親のものだ。
「旺輝殿もお変わりなく」
「えぇ」
爺は少しよそよそしく答えた。
奏と珠樹は顔を見合わせて笑った。
爺の照れ隠しだからだ。