誠-巡る時、幕末の鐘-



「………母様、もう??」


「大丈夫。あなたの事はずっと見てるから。旺輝殿、響をよろしくお願いしますね??」


「分かっています」




まだ素っ気ない爺に、珠樹も奏もやれやれと首を振った。




「皆様もどうかお体をお大事に」


「分かりました」


「では」




輝耀が深々と頭を下げると、風がサアッと室内まで入ってきた。


次の瞬間、篁達の姿は消えていた。




「………響、良かったな」


「はい」


「かなで、だっこ」


「はい」




牛頭から下ろされ、じっと輝耀を見ていた澪ちゃんが手を伸ばしてきた。


その瞳は揺れている。




「澪ちゃんも母上に会いたくなられましたか??」


「……………うん」


「今度篁様にお願いしてみましょうね」


「うん!!」




この子が笑顔になるなら。


対価も安いものだもの。


やっぱり女の子は笑顔が一番いい。


輝耀とも会えた。


なら…………。




闇夜はさらに濃くなっていった。



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