誠-巡る時、幕末の鐘-



―――次の日




奏は自分の部屋にいた。


鷹がミエに黙って、眠りを妨げるための薬を作る道具を持ってきている。


だが、それは使われることなく文机の上に置かれていた。




…もし、このまま眠りについても……。




その時、廊下をパタパタと走ってくる音がした。




「奏お姉ちゃん、遊ぼ〜!!」


「栄太、お前……」




ずっと黙ったままだったので、嫌われたのかと思った。


だが、目の前にいる栄太は変わらず遊ぼうとねだってきた。




「奏お姉ちゃん、この間はごめんね。僕、お姉ちゃんも桜花も大好きだから!!」


「そうか。……よし、ちょっと休憩だ。甘味処へ行こう」




奏は栄太の手を引いて部屋を出た。


……手つかずの道具を残して。



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