誠-巡る時、幕末の鐘-
「なぁ、栄太。栄太は大きくなったら何になりたい??」
「僕??僕はお医者様になる。もう誰も傷ついたり病気になって欲しくないから」
「そうか。それはいい心がけだ」
栄太は少しも迷うことなく質問に答えあげた。
瞳には強い意志が宿っていた。
「………栄太、実はな、また遠出をしなきゃいけないかもしれない」
「遠出??江戸??」
栄太はキョトンとしている。
奏はゆるゆると首を振った。
「いや、異国だ。もしかしたら帰ってこれないかもしれない」
「………え??」
栄太の顔が歪み始めた。
奏はすっと視線をそらした。
これ以上は顔をあわせるのがつらいのだ。
ごめん、栄太。
また嘘ついて……。
心の中で謝った。
言葉には出せないから。