誠-巡る時、幕末の鐘-



―――屯所




別れの時は刻一刻と迫っていた。


集中するからという理由で人払いをしたので、今、奏の部屋には誰もいない。


奏は朦朧とする意識の中、力を振り絞って障子を開けた。




「………月が出てきたか」




雲一つない夜空に、月が明るく君臨していた。


奏は障子にもたれかかり、それを眺めていた。




「奏、薬は………っておめぇ、何やってんだよ!!?」




様子を見にきた土方達が、部屋を出てただじっと月を見ている奏に気付き、走ってやってきた。


奏はにっこりとそれを迎えた。




「土方さん達………もうそろそろみたい。……なんか眠くなってきた」


「奏!!」




山崎がバッと奏の自室に入り、文机の上の道具を見ると、何もされていなかった。


奏を振り返ると、淡く微笑んでいた。




「連れてって……下さい。……壬生寺へ」


「分かった。分かったから!!」


「しっかりしろっ!!」


「寝るな!!」




奏は爺に抱き上げられ、壬生寺へと運ばれた。



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