誠-巡る時、幕末の鐘-



―――壬生寺




「芹沢さん……すみません。命令……聞けるか…分かりません」




奏は芹沢の墓に向かって話かけた。


もう大分眠りが近づいているのだろう。


言葉が途切れ途切れになっている。


それでも懸命に言葉を紡いだ。




「でも……お願いは…聞き届けた…から……いいです……よね??」


「奏、おい。しっかりしろよ」




たまらず永倉が体を揺すった。




「……はは。……無理…かな」


「何が無理だよ」


「いつもみたいに〈大丈夫って言ってるでしょ〉ぐらい言えよ」


「………ごめんね」




奏の声はだんだん弱くなっていく。




「もし、今寝たら、目が覚めた時、俺達みんないねぇかもしれねぇぞ??」


「みんなで花見をすると言っていたでしょう??」




土方や山南も口々に言い募っていく。


だが、それに反して、奏の瞼は落ちようとしていた。



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