誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏ちゃん。しばらくの間、さよならだね」
「一生さよなら、金輪際さよならがいいね」
この二人、こんな場面でも諍いを始めた。
だが、それも鷹の一言で終息した。
「おいおい。そんなけんかしてっと、横からさらわれちまうぞ??」
『何のこと??』
二人共、聞き捨てならぬと聞き返した。
「栄太がもう一度会えないなら捜し出して嫁にするって言ってたぞ??」
「栄太が!!?」
「あいつ、マセやがって!!」
二人だけではなく、周りで聞いていた方も目を丸くし、声を荒げた。
さっきまでのしんみりした空気は消し去られていた。
鷹はニンマリと笑った。
コイツはしんみりした別れは嫌いだからな。
貸しにしといてやる。
鷹は眠っている奏にちらりと視線を投げかけた。
すると、奏が唇を軽く上げた……気がした。
あくまでも気だが。