脇役の王子様


職員室に、体育館の鍵を借りに行くと、顧問の先生はいなかった。どうやら出張らしい。

こりゃみんな気が緩むんじゃねえかな、と思って回りのやつらを見渡すと…
案の定、キャプテンの優助以外は、部活に集中できていないみたいだった。特に真岬は。

いつもは冷静に落ち着いて、練習も片付けもこなす真岬が、今日は嘘みたいに凡ミスが目立つ。
真岬らしくないなぁ、なんて思いつつ、…自分も全然集中できていなかった。


そして、5時50分。
グダグダになってしまった部活を、優助に頼んで早めに切り上げてもらった。


「……架んち、…今日親いねぇの?」
「おう。レストラン勤務だし、ほとんど毎日いねーんだ。」

言葉は少ないけれど、今真岬がどんなにワクワクしているか、伝わってきた。


体育館の隅で真岬と話していたら、優助が入ってきた。

「なあ、架~。ほんとにオレらまで行ってもいいのか?」
「おう!」
「5人だぞ?しかも親いないって…誰が夕飯作ってんの?」
「朱梨。」
「え?芽吹が…1人で?迷惑じゃないかなあ?」

…そーいえば、優助は未琴ラブだったっけなあ。
今はまだ、未琴もいることは言わないほうが良いか♪
黙ってたほうが、面白そうだよな。ま、サプライズってことで!←

「朱梨、料理上手いし、作んの早いから全然OKっしょ!」
「ほんとに?」
「オレの可愛い妹、なめんなよ?」
「うわー。架ってシスコン~?(笑)」
「……」

あれ?…
真岬の視線が妙に痛く感じる。

「……架…シスコン、なのか?」

「いやいやっ!何だよ、お前ら~。優助も真岬も間に受けすぎだろ~!冗談だよ、冗談。シスコンとかオレも無理だし。」
「なんだ、冗談か。まあ…でも、芽吹ってふつーに可愛いよな。いいやつだしさ。」
「…あれ?優助って未琴が好きなんじゃないっけ?」
「うん。大好き。」
優助、素直すぎる。あっさり言ってくれちゃったよ。

「でも朱梨も可愛いって…?」
「い、今のは、そーいう意味じゃない!オレはずっと未琴だけだから…///」

おお…。聞いてるオレが恥ずかしくなる。
真岬も優助も、ただ純粋に「好き」なんだろうな。

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