脇役の王子様
いきなり決まったことだけど、朱梨に伝えにいったらOKしてくれた。
…そういえば、そうだった。
朱梨に「基瀬くんも来る?」って聞かれるまですっかり忘れてたけど、アイツも前から、真岬のこと結構気にしてたんだっけ。
なんだよ、おまえら。もう両思いなのか?
でも、真岬に比べて朱梨は全然素直じゃない。
顔は真っ赤なくせに、「ちょっ…やめてよ。違うもんっ!」だって。
真岬の話をしてから、ずっとニヤニヤしてんじゃねえかよ。
もしかして、本気で自覚してないのか…?
ほんとにバカだな~、朱梨は。
未琴だって、協力してくれるっつってんのによぉ…。
それから真岬は、「しゅ、朱梨さんって…料理得意?」とか「…朱梨さんと、話してみてえ、な。」とか…
朱梨朱梨朱梨朱梨って、朱梨のことばっっっかり!
…ほんと、意外だよ。
恋愛について、全然興味なさそうに見えてたし、女子とあまり関わらないクールな真岬から、恋バナを聞けるなんてさ。
しかも相手は、オレの双子の妹。
…なんでか分からないけど、真岬の話を聞いてから、オレの胸の奥のほうはずっとモヤモヤしていた。
そんなこんなで、あっという間に放課後。
複雑な気持ちを精一杯おさえて、無理やり元気に笑って見せて…
「じゃあ、よろしくなー!」
朱梨にそういって、オレは部活に向かった。