洞穴咄〜ホラーナハナシ〜
口を尖らせてそっぽを向く彼女、文恵は、私の妻であり恋人でもあり、そして可愛い妹でもあった。
「怒るなよふーたん」
「っ! 恥ずかしいから人前でソレはやめてっ」
「じゃあ機嫌直せよ、ふー……」
「判ったからっ」
慌てて承諾で遮る彼女。そんな他愛の無いやり取りもまた楽しい。子供が居なくとも私達なら、共に白髪の生えるまで、手を取り合ってやって行ける。
そう思っていた。
車中のお供に乾きものと飲み物を買って、私達はまた車へ乗り込む。