洞穴咄〜ホラーナハナシ〜
ここで不安を煽る言葉を吐いたとしても、折角のドライブに水を注すだけだ。
私は気を取り直して、ドライブ用に編集したCDを挿入した。
「キャッ! ボリューム最大よっ」
慌ててツマミを左に回す文恵。耳に膜が張ったような感覚。キンキンと頭の中に響き続ける高周波。
「……い。おお〜い」
車の外から呼び掛けられているのに漸く気付いた。バイクに二人乗りした男性が手を振っている
「ああ、どうも」
私は窓を開けて会釈した。車の流れは相変わらずノロノロだったので、会話には困らない。