洞穴咄〜ホラーナハナシ〜
「ご夫婦かい、旅行に行くつもりだったのかい?」
「え、ええ」
日焼けした顔にサングラスがよく似合う中年男性の二人組。革のジャケットの上下を着こんでさながら『ちょいワルおやじ』という雰囲気だ。
「とにかく気付いたら駄目だからな。そのままで居たかったら考えるなよ」
「そうそう。知らぬが仏だぜ」
排気音を高らかに響かせて二人は走り去る。あっという間に渋滞の彼方へ消え去った。
「気付いたら駄目って何かしらね」
見ると文恵は不安そうに私を見詰めている。