洞穴咄〜ホラーナハナシ〜

「そう。だから実家には行かずに、温泉へ行くことにしたんだからな」


もともとインドア派で、人混みを余り好まない私達。

休みの度にお互いの実家を行き来するのがすっかり習慣着いてしまっていた。


しかしなんだかんだ言っても、やはり相手の親との付き合いは気を遣う。


ようやく訪れた休みだったし、たまには二人きりの時間が欲しくなったのだ。


「なんか緊張してきたなぁ。初めてのお泊まりみたい」


妻は頬を染めて俯いた。もう十年近く前のことが、色鮮やかに甦ってくる。


< 6 / 56 >

この作品をシェア

pagetop