洞穴咄〜ホラーナハナシ〜

私達は学生と社会人。とりわけ彼女は研究熱心な文学少女で、私は忙しいだけでちっとも儲からない末端の建設労働者だった。


そんなわけですれ違いも多く、実際に愛を育んだのは、のべつ交わしていたメールのやり取りだった。


「文恵さん。狼には男がなるもんだと相場は決まってるんだが……」


「だから私は痩せた羊のまま、貴方に食べられます」


初めて身体を交わした夜は、二人の心をこれまで以上に深く結び付けた。


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