【短編集】七ツ丘中 百物語
ベランダへ回った遠山と、ガラス越しに目が合った。
机の上に乗った俺は、えらく高い位置から遠山を見下ろす。……いつも目線が同じくらいだから、すごく新鮮というか、優越感?
窓用洗剤を俺に向かって吹きかけて、遠山は楽しそうに笑っている。攻撃は全部ガラスに阻まれてここまでは届かないが、仕返し、とばかりに遠山の顔部分のガラスをごしごしこすった。
楽しそうに爆笑してる彼女に、わざと作った怒り声で、「ちゃんとやれ!」と言うと、一瞬きょとんとしてまた爆笑。
「なんなんだよ、おま、まじめに掃除しろ!」
「森くんが、まじめに、そう、じ、とか!」
「笑いすぎ!」
なんだよ、俺がまじめにしちゃいけないのかよ!
いつまで経っても笑いやみそうにない遠山を、もう一言叱りつけようとした時、遠山がぱたりと笑うのをやめた。