【短編集】七ツ丘中 百物語

いつのまにか、俺の乗った机のところまで遠山が近付いてきていた。
俺を見上げる彼女の顔は、ちょっとだけ翳っている。さっきまでの彼女の雰囲気とはまるで違っていて、俺は机を下り、雑巾を置いた。

「どうした?」
「ね、……へんじゃない?」
「あ? あぁ、高いところにまで手形をつけるバカがいることか?」

うーん、と考えるような仕草をする遠山。

「まぁ、冬でもないのに窓ガラスで遊ぶな、とは思うけど……」

去年、冬の大掃除の時に窓清掃をやったが、大変だった。みんな、曇ったガラスに文字を書きまくって、指紋べたべたで。俺自身もやったから、ちょっとだっけ反省もしたもんだけど。

でも、遠山はまだ俺の話が耳に入っていないのか、うーん、と首をかしげている。

< 13 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop