Яё:set
ネットの脱出ゲームの場合、とりあえず隈無くクリックしてヒントを探す事が基本である。
だが、今自分が挑戦しているのはネットではなくリアルである。
刑事の様にありとあらゆる所を調べればいいのだ。
俺は運動不足の細い四肢を動かして部屋を調べ始めた。
観葉植物を退かしてみたり、ベットの下を覗いてみたり…
まだ5分位しか経ってないのに既に息切れを起こす。
俺は極端に体力がない。
それもそのはず、運動らしい運動なんてここ数年したことがない。
運動どころか、トイレと風呂以外で部屋から出た事がない。
いわゆる“ひきこもり”とか“ニート”と言われる人種だ。
そもそも、俺がこうなったのには理由がある。
思い出したくないから詳しくは言わないが、簡単に言うと“人間不信”になったからだ。
嘘…裏切り…そういった低俗な人間達に嫌気がさしたのだ。
そして俺はそんな奴等に一線を引いた。
結果、ひきこもる事が一番手っ取り早かったというだけだ。
流れる汗を拭う。
喉の乾きを感じ、冷蔵庫を開けた。
「…なんだよ…ミネラルウォーターしかねぇのかよ…」
悪態をついてそのペットボトルを手に取った。