Яё:set
今にも噛み付きそうな赤井を宥める。
何か言いたそうな顔をしている彼を「やめておけ」と諭した。
会議が終わって本部を出ると赤井は廊下の壁をガンガンと殴っていた。
私はその様子を見てクスッと笑った。
「…なんすか…」
「いや…なんでもない。」
「絶対馬鹿にしてますよね!?…いいっすよ、僕はどうせ馬鹿ですし!」
「馬鹿にしてはいない。…ただ、“若いな”と思っただけだ。」
そう言うと赤井はキョトンとして私をまじまじと見た。
「…また“青い”って言われるのかと思った…」
「ハハハ!“青い”って言われたいのか?」
そう笑う私を「茂田さん」と追い掛けて来る赤井。
「茂田さんには“野心”ってないんすか?」
「そんなもの、とっくの昔に捨てた。」
そう…“野心”なんてもんは、若いから持てるんだ。