Яё:set
時々身体が動かなくなるんだ。
その原因を先生達は教えてくれなかったけど、僕には解ってた。
“新薬の副作用”…。
こっそり自分のカルテを見たんだ。
そしたら僕が飲んでた薬が無認可の…しかも開発途中の新薬だった。
僕はそれに気付いていたが飲み続けていた。
…もう昔の自分には戻りたくないから…。
今更両親の所へなんて戻りたくない。
ウォン先生は「それでも構わないよ」と言ってくれた。
僕は…僕を“リセット”したかったんだ。
ここに来て一瞬でももう一人の自分になれた。
それはウォン先生のお陰で…
「先生…。僕はもう先生の手伝いは出来ない?」
「そんな事ないよ。君にはずば抜けた素晴らしい記憶力がある。それは私がずっと欲しかったものなんだから…。」
僕は恩返しがしたかった。
「使ってよ、先生。“僕の記憶力”…先生にあげる。」
先生は僕の言葉に満足そうに笑った。
─「有り難く“君の記憶力”を使わせて貰うよ。」─