Яё:set
多分、距離的には西側からの方が近い。
だがそれだと途中で野宿する羽目になるだろう。
旅の初日から野宿はさすがに避けたいので、多少の遠回りも仕方がない。
再び歩きだし、もう少しで森を抜けようかという時になってなんとなく微妙な空気の違いを私は感じた。
“なんだろ…見られてる…?”
気のせいならいいのだが、やはりロールプレイングには付き物のアレだろう。
私は肩に背負っていた弓に手を掛けて、辺りに気を配る。
「…ところで、本当に私弓使えるんでしょうね…?」
「エルフなんだから大丈夫じゃない?長老は魔法も使えるみたいな事言ってたし…」
他人事のようにサラッと言うシンを私は軽く睨んで文句を言おうとした時だった。
──ガサガサッ…!
茂みの向こうに何かが蠢く気配がして、反射的に矢筒から矢を取り出すと弦を引いた。