Яё:set




「大丈夫か?」




その場にしゃがんだまま動けない私を、そう言って覗き込む彼の言葉でやっと我に返る。




彼は私に手を差し出しフッと笑った。




「無茶し過ぎ。高所恐怖症だろ?…“フウカ”…」




…やっと会えた…。




「…“レイジ”…!」




私は彼に迷わず抱き着いた。




「よかった…会えてよかった!…私…レイジに会いたくて…!」




わんわんと泣く私を優しく抱き締め、“よしよし”とレイジは背中を撫でてくれた。




泣き止まない私を抱き上げ向こう岸まで来ると、レイジは私をそっと降ろす。




長い耳を垂れた私は涙を拭いながら真っ直ぐレイジを見つめた。




「まさかこんなところで会えると思わなかった!」




「この先を本当は進んでたんだけど、思いの外敵が強くてさ…」




彼はパーティーを増やそうと引き返して来たらしい。




それは偶然なのかもしれないが私には必然的にも思えた。




いつだって彼は私を助けてくれる…。




「…次夢を見たら…私、“セーブ”するわ…!」




…やり直しても貴方と一緒がいいから…。





   ◇◇◇◇◇◇◇◇


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