夏の記憶
「だってさ~~朝比奈っていつも優奈のとこにくるでしょ~~?
いくら幼馴染って言ってもさ、仲良すぎだって。あやしいと思ってたんだよね~~」


「それ言ったらこーちゃんだっていつも梢のとこにくるじゃん」


受験に向けた夏休みの補習は午前中で終わり。
補習を受けた生徒はとっくに教室からいなくなっていた。


わたしたちは梢の持っていたお菓子を食べながらダラダラしているうちに、
いつの間にかお互いの好きな人は誰だという話になっていたというわけだ。



「いやいや~~優奈と朝比奈の雰囲気みてれば誰だってあやしく思うって~~」


梢は右手でとっくに中身のなくなったトッポの箱をいじりながら、左手を顔の前で縦に振った。


「え?わたしたち付き合ってるみたいに見える?」


言葉とは裏腹に、わたしは不安げに尋ねた。


「う~~ん、別にみえなくもないけど…

てゆうか、美咲は気にしてると思う」



「え??梢、美咲がタケルのこと好きなの気付いてたの?」


わたしは思わず梢のほうに乗り出す。


わたしにとっては、梢から美咲の名前がでるのは意外なことだった。



そう、あの日、タケルに向けられた美咲の視線に気がついてしまってから、

わたしは美咲のことが気になって仕方なかったから。
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