夏の記憶
それが嫉妬という感情だと気がつくのに、時間はからなかった。




「美咲が朝比奈のこと好きなのなんて、ちょっと観察してれば判るって」


校庭を見下ろしながら梢は涼しい顔で言った。


梢の人間観察力というのは時に驚かされる。


わたしはすぐ妄想の世界に入ってしまう癖があるので、なかなか人の細かい心の動きや癖など見抜けないほうだ。


それに比べて梢は、実家が商店街の美容院なだけあって、小さな頃から店の客達に囲まれて育ったせいか、人づきあいがとても上手だった。


ただ、ややおせっかいが気になるところではあるが。



「でさあ、優奈どうするの?」


その唯一の弱点、おせっかいを全開にした梢の質問がわたしに向けられた。


「どうするってなにが?」


「だから、このまま美咲に朝比奈をとられちゃってもいいのってこと」


「そりゃあよくはないけどさ…」


わたしは言葉に詰まった。
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