夏の記憶
「聞きたい?」


梢が下敷きであおぐ手を止める。


「じらさないで!」


いらいらして今にも机をたたきそうだった。


「一昨日さ、バスケ部の試合うちの学校でやったでしょ?わたし夏期講習が終わったあとけんじょうに誘われて弓道部にちょっと顔出してたの」


そういえば一昨日梢と幸ちゃんは、夏期講習の後もう引退した弓道部の後片付けをするといったので、わたしは一人で先に帰ったのだった。


「それでさ、せっかくバスケ部の試合してるからちょっと応援でも行こうって二人で体育館に行ったの」


梢のもったいつけたしゃべり方に、わたしは余計にやきもきする。


「そしたら試合終わってて、まあ知っての通りうちの学校が負けたんだけど」


それは一昨日試合の後にタケルからメールが来たから知っていた。


「その体育館の出口のところでさ、美咲と朝比奈が携番交換してるの見ちゃったんだよね」


今思えば、そこまでもったいつけて話すような内容でもない気がするが、その時のわたしの動揺ぶりたるや散々だった。


「まじで?やばくない?」
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