夏の記憶
「けっこう人来るよね~」


団扇で顔をあおぎながら、人ごみを見渡して梢がいった。

梢は、白と黒の市松模様にピンクや白のバラをあしらった浴衣を着ていた。
帯にはレースがあてがわれ、栗色のショートヘアーには大きなバラの髪飾りを付けている。


「そうだね」


わたしは上の空で答えた。


わたしの浴衣は、白地にピンクのガーベラをあしらった柄で、ピンクの帯を締めていた。

今年祖母に買ってもらったお気に入りだった。


静幡多神社は、既に祭りに集まった人でいっぱいだった。

神社の入口の階段の前で、わたしたちはタケルと幸ちゃんを待つ。


「優奈顔が緊張しすぎだから」


梢が笑ってわたしの頬をこづいた。


「今からそんな緊張してたら告白する前に好きなのばれちゃうよ」


「え!それはこまる!」


わたしが慌てて巾着から手鏡を取り出すと、梢が両手でわたしの頬をつかんでのばした。


「やめてよ~~」


笑いながら梢の手をはなそうとしていた時だった。
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