夏の記憶
次に出たわたしの言葉は、思っていたのと全く違うものだった。


「タケル……ってさ、最近美咲と仲いいよね」


口に出した瞬間わたしは後悔する。どうしてこの場面でそんなセリフが出てくるんだろう。


「は?」


暗闇の中のタケルの顔はよく見えないが、眉間にしわが寄ったのが判った。



「だから…美咲。最近メルアド交換したりとかしたんでしょ」



「ああ…」



タケルは、ため息の混じったような声で相槌をうった。


「来週花火に誘われたけど」


わたしの心臓が大きくドクンといった。


「誰が一緒に行くの?何人で?」


平静を装っていたけど、たぶんわたしは早口になっていたと思う。


「二人で」


「でも……そんなの行かないでしょ?


「行くって返事したけど。別に…断る理由ねえし」


静寂の中、タケルの声がわたしの心臓に冷たく響いている気がした。

< 39 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop