夏の記憶
「そうなんだ。タケルって美咲みたいなタイプの子が好きなんだ」


言いたくもない言葉が次から次へと口をついて出てくる。


まるでわたしではないもう一人のわたしがしゃべっているようだった。



「別にそういうわけじゃ…ねえよ」



「じゃあなんで二人で花火なんていくの?」



「お前には関係ねえだろ。なんで怒ってんだよ」



「別に怒ってない!」



「あっそう」



タケルはそう言ったきり、なにも言わなかった。



わたしも、それ以上なにも言えなかった。



しばらく沈黙が流れて、境内に続く階段を降りはじめたのはタケルが先だった。


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