夏の記憶
「おまえ………どこまでやる気ねえ返事だよ」



よほどおかしいのか、2mほど先を歩くタケルの白いTシャツの肩は大きく揺れていた。



「だって…」



タケルが急に変なこと言うから。



そう言いたかった。



「優奈?」



私の異変に気付いたタケルが足を止めて私の方を振り返る。



「……なに泣いてんだよ」



私は泣いていた。



緊張の糸が切れたのか、タケルと手をつなげたからなのか、告白出来なかったのが悔しかったからなのか、タケルが笑ったからなのか……



理由はたくさんありすぎてわからなかったけど。



「おい優奈…」



顔を覆っていたからタケルの顔は確認できなかったけど、タケルが私の目の前に立っていたのはわかった。



そして、タケルは少し困っていた。


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