夏の記憶
「明日……えっと、明日は何にもないよ!家で勉強してるくらい」



「それなら……」



言いかけてタケルはまた頭をかいた。



今日のタケルは珍しく歯切れが悪い。



「まあいいや、また明日メールするな」



そう言うとタケルは、なんだか照れくさそうに私の返事も聞かずに「じゃあな」と後ろを向いた。



「う、うん。また明日ね!」



慌ててベンチを立って私はタケルに手を振った。



タケルは、一瞬だけ私の方を振り返って右手を挙げると、小走りで社の階段を降りて行った。




大きな瞳が夏の日差しに反射して、きらりと光ったような気がした。
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