夏の記憶
お社の地面に私は膝から崩れ落ちる。



うっうっと声にならない声が喉から漏れる。




「タケル タケル」



地面に手をつき、声にならない声で、私はタケルの名前を何度繰り返しただろう。


堰を切ったように溢れだした涙と私の慟哭は、社の木々に吸い込まれて夏の暑さに溶けていく。






ふと、背中に冷たい風を感じて私は顔をあげた。




いつの間にか蝉の鳴き声は消えて、木々のさわさわと揺れる音だけが耳を通り過ぎている。



「優奈」



聞き覚えのある声に、私の身体は硬直する。



出しつくした涙をぬぐう事も忘れて、私は声のするお社のほうを勢いよく振り返った。
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