夏の記憶
「た、タケル……」

「梶田!!」


ほぼ同時にわたしたちは声をだす。


「やっぱり~~!」


梢は興奮気味に椅子から立ち上がる。
秘密を言い合ったのがよっぽど嬉しかったみみたい。


「ちょっと大きい声ださないでよ」


慌ててわたしは梢のセーラー服の端を掴んで椅子に座らせた。


「ごめん、ごめん。でもやっぱりって感じだったから~」


テンションが上がると語尾を伸ばすのが梢の癖。


さっきから伸びっぱなし。


「ねえねえいつから?優奈と朝比奈って昔から仲いいんでしょ?」


梢は身を乗り出して、私に詰め寄った。
マスカラをつけたまつげの下の目は、大きく見開いている。



「いつって……なんかなんとなく…気が付いたら…」


「え~でもほら、好きだな~~って気付いた瞬間とかあるでしょ?

わたしなんか~~梶田のことなんか最初は全然意識してなかったんだけど~~」




わたし…

わたしはいつからアイツが好きだったかな。



わたしたちは本当に長い時間一緒にいた気がする。

でも小学校2年生のあの一件があってから、なんとなくわたしの気持ちは内緒にしなければいけない気がしていた。



でもあの日…

そう、本音をいったらね、わたし気持ちに気がついた瞬間があったんだ。




それは中学3年生の春。


あの日から…
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