ヤンキー君はトキメキ製造機
~第一章~はじまり
暖かい春の日差しが
カーテンの隙間から入り込んできた
部屋は気持ちの良い明りに照らされた
窓を開けると入ってきた風に
鼻腔をくずぐられる
・・・まだ少し、風は冷たい
「芽亜いいかげんに起きなさい」
下から聞こえるお母さんの声。
「起きてるよ」って言葉は飲み込んだ。
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一階に降りると同時にお母さんがため息をつく
「いったい何時だと思ってるの」
お母さんの声に棘がある
「起きてたよ」ぶっきらぼうに言う
「朝ごはん早く食べちゃってよ」
お母さんに急かされてトーストをほおばる
極めて不味い訳でもなけりゃ
目立って美味しい訳でもない
無味。
いつからか私は人生に「味」を感じなくなっていた
平々凡々な毎日
自分は不幸だと神様を恨もうなんて思わないけど
別に毎日が楽しい訳じゃなかった
私は長い間恋をしていない
恋の仕方なんて忘れた
ましてやしたいとも思わない
不毛だ