Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

 ◇◆◇◆◇

「真白、次は何?」

「えっと……コーンがあと五個だね」

 放課後、私は紫乃ちゃんと一緒にチェックをしていった。
 最初は私も運んだり出したりしていたけど、だんだんと届かない物を運ぶようになって。今はこうして、私はどれが幾つあるのかと書き記している。
 本当……もうちょっと身長が欲しい。
 軽々と上の棚に手を伸ばす紫乃ちゃんを見てると、やっぱり羨ましいなぁって思ってしまう。

「あとは、ここらの確認?」

「うん。一応チェックしてって」

 今更ながら思うけど、翠先輩って体育委員長なんだよね。
イメージからすると、環境とか生活って感じがするけど。



「すみません! そこの棒、取って下さい」



 入り口から、女子が話しかける。
 指差す方を見ると、棚に立てかけられた棒が目に入った。
 わかりましたと言うと、先に、近くにいた紫乃ちゃんが棒を掴む。

「これだよね? 一本で足りっ!?」

「っ!?」

 反射的に、私たちは目をつぶった。突然頭上に、何かが降ってくるのが見えた。



 バザッ!
 ゴロゴロゴロ……。



 鈍い音が、何度も聞こえる。



 床に当たる音。
 体に当たる音。



 一瞬のことなのに、それが、いやに長く感じた。



「っ~…し、紫乃ちゃっ――!?」



 ゆっくり目を開けて呼びかければ、目の前には、落ちてきたであろう段ボールと……石、だった。それも小石だけじゃない。大きい物では拳ぐらいの石が、いくつも転がっていた。



「……真白?」



 うずくまっていた紫乃ちゃんが、ゆっくりと立ち上がる。



「ははっ……災難だよねぇ?」



 苦笑しながら、自虐的に言う紫乃ちゃん。
 一番間の悪い場所にいたようで、紫乃ちゃんの周りには、私がいた場所よりもたくさんの大きな石が転がっていて。おまけに、全身砂まみれだった。



「――――ほっ、保健室!」



 入り口にいた女子は、しばらく固まっていたのか。ようやくそんな言葉を発し、他の生徒を呼びに行った。
 すると紫乃ちゃんは、立つのが辛いのか、その場に座り込んでしまう。駆け寄って見れば、頭のどこかを切っているらしく、血が滲んでいた。

「と、とりあえずこれ!」

 ハンカチを傷口に当てていると、知らせを聞いた先生がやって来る。それに私たちは、手を引かれながら保健室へと向った。



「あ~切ってるわねぇ」



 私たちは、揃って頭に包帯を巻かれていた。
 紫乃ちゃんは右手や頬にもケガをしていて、私よりも痛々しい姿をしている。

「酷く痛むようなら、病院に行きなさいよ?」

 それに頷くと、私たちは荷物を受け取り、そのまま家に帰った。
 翠先輩には、ちゃんと知らせておこう。
 先生が話をしてくれるらしいけど、自分からちゃんと言っておこうと思った。
 メールを送ると、すぐに先輩から返信が。
 【残りはやっておくから、ゆっくり休むのよ~】と、そんな内容の文が送られた。
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