Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
「……オレには連絡無し、か」
携帯を確認したが、真白からの連絡は無し。
なんで浅宮にはして、オレにはしてこない?
真白のことだ。心配させたくないとか、迷惑かけたくないとか余計なこと考えてんだろう。――会ったら即行、悪戯決定だな。
「志貴くん、なんだか楽しそうね?」
「半分な」
「その様子じゃ、悪戯する気満々ってとこね」
「わかってるなら聞くな。――お前も、気を付けろよ」
「大丈夫よ。今日は東雲(しののめ)さんが迎えに来るし」
「ま、それでもな。――では浅宮さん、また明日」
生徒会室から出ると、いつものように優等生となる。すれ違う先生や生徒に挨拶しながら帰っていれば、校門を出て間もないところで、オレは腕を掴まれた。振り返って見れば――そこにいたのは、見覚えのある女子だった。
「何か用ですか?」
「と、突然すみません! どうしても、梶原くんに聞きたいことがあって……」
また告白か? こっちは早く、真白に連絡入れたいってのに。
内心イライラしながらも、なんとか女子に笑顔を向ける。
「隼人は……誰かと、付き合ってるんですか?」
だが、女子から発せられたのは、意外な言葉だった。
コイツ……隼人のアレか。
事態を飲み込んだオレは、面倒臭いながらも、その質問に答えた。
「いえ、隼人にはいませんよ。――特定の子は、作りませんからね」
ま、どう考えてもお前じゃないがな。
「だったらなんで、お昼になると生徒会室に女子がいるんですか? 浅宮さんは分かるけど……二年がいるなんて」
納得がいかないと、女子は苦々しい顔をする。
確かに、今まで生徒会のメンバーでも、仕事以外ではいつもの面々以外は入れなかった。だから疑問に思うのも無理はないが、あかるさまに、真白に敵意を向けられるのは困る。
「彼女は仕事ができるんですよ。それに、浅宮さんのお気に入りですから」
「本当に、それだけですか?」
「えぇ、それだけですよ。彼女は、隼人と何もありませんから」
つーか、オレは早く帰りたいんだよ。コイツ、いつまで引っ張るつもりだ?
違うというのに、未だ納得がいかないようで。それから何度か問答をしていれば、ようやく女子は、
「……分りました」
と、渋々ながらも、オレの腕から手を離し急いで立ち去って行った。
ったく、隼人もきちんと処理すればいいものを。
帰るなり、すぐさまオレは真白に電話をかけた。
だが、一回目は繋がらず、二回目は数分間を置いてからかけた。
しかし、なかなかな出る気配はない。
風呂でも入ってるのか?
それとも――。
もしかしたら、倒れてるんじゃないかと嫌な予感が過る。
三回目の電話。これで出ないなら、藤原に様子見を頼もうと思っていれば、ようやく、真白の声が聞こえた。
◇◆◇◆◇
携帯が震え、手に取り画面を見る。途端、心臓はドキッ! と、大きく跳ね上がった。しばらく画面を見つめていたものの、やっぱり出た方がいいと思い、深呼吸をしてから、ゆっくり言葉を発する。
「も、もしもし……?」
『……ようやく出たか』
電話をしてきたのは、梶原先輩。
いつもより少し低い声で、先輩は話を続けた。
『お前、なんで浅宮には連絡して、オレには連絡しない?』
「そ、それは……たいしたこと、ないですから」
『ほぉ~……頭に包帯巻いてるのにか?』
「っ! ま、巻いてます、けど」
『しかも先生の話じゃ、切り傷があるらしいな。――それでも、たいしたことないって?』
そりゃすごいなぁ~と、呆れたというか、拗ねたような……なんとも言えない口調で言う先輩。
姿が見えなくても、まるで目のまで威圧されているかのような感覚がある。
こ、この流れからいくと……何かがあるって、そんな予感が。
『つーことで――明日、迎えに行く』
それまで部屋で待ってろと言う先輩に、私は驚きの声をもらした。
迎えだなんて……そんなの、一気に噂が!
一緒に行くことに不安を感じていると、有無を言わさぬとばかりに、先輩は念を押してきた。