Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

 一体、誰が送ってきてるんだろう。
 和泉さん、かな――?
 でも、こんなにたくさんのメール、一人じゃ無理だろうし。
 となれば、これをやっているのは複数。現時点で可能性があるのは――。

「――先輩の、ファン」

 自然と、その考えにいきついた。
 一緒に登校したから、それなりに噂にはなると思ってたけど……。
 まさか、早速精神的に攻撃を受けるとは思わなかった。
 こんなにメールがくるんだから、誰かが私のアドレスを晒したってことになる。
 もしかしたら――紫乃ちゃんも。
 変なメールを送られてるんじゃないかと思い、電話をけた。

『はーい。どうしたの?』

「遅くにごめんね。あのさ……紫乃ちゃんのとこ、変なメールとか来てない?」

『いいや、きてないわよ? 何、そんなのが届いてるの!?』

「違う違う! さっき友だちと話してたんだけど、悪戯メールや悪質メール?って言うのかな。そういうのが多いって話してたから」

 なんとかごまかせば、紫乃ちゃんに追求されることなく、話を進められた。

「ワンクリック詐欺とか? 紫乃ちゃんは大丈夫かなぁって」

『大丈夫。こっちはそんなメール来てないから』

「そっか。それならよかった」

 声も、いつもの調子だ。
 これなら、本当に何もなさそう。
 紫乃ちゃんと話していたら、少しだけ、嫌な気分が薄らいでいった。

 ◇◆◇◆◇

 翌日の登校も、紫乃ちゃんや先輩たち四人で行った。
 でも、朝から先輩が来ることはなく、下で賀来先輩と待っていてくれた。
 さすがに悪いって思ったのかな。

「――真白」

 別れ際名前を呼ばれ、先輩に近付く。

「昼休み、いつもどり来いよ」

「はい、わかってます。もちろん、紫乃ちゃんも一緒に、ですよね?」

 隣にいる賀来先輩に聞けば、お願いねぇ~と笑顔で言われた。

「真白~。行くよ」

 紫乃ちゃんに呼ばれ、先輩たちに挨拶をして別れた。



「――――?」



 教室に入ると、視線を感じた。
 なんだか、周りがひそひそとこっちを見て話しているような……。
 昨日のメールのこともあるから、変に意識してるのかも。
 気のせいだと言い聞かせ、授業に集中――したのだけど。
 時間が経つにつれ、クラスの友だちのぎこちなさが目に付き始めた。
 私が輪に入ろうとすると、あかるさまに話題を変えたり――…。
 さっきなんて、顔に出てる子もいたんだよねぇ。



「――真白、お昼だよ?」



 呼ばれて、もうそんな時間なんだと知った。
 二人でいつもの場所に行けば、会室の近くで、嬉しそうな数人の女子とすれ違った。
 その様子に、お弁当を持って来たのかな、と思い会室に行けば、机には数個のお弁当箱が。
 やっぱり、ファンの人たちだったんだ。



 もしかしたら、あの中の誰かが――…。



 って、ダメダメ!
 決まったわけじゃないのに疑うなんて。



「――真白ちゃん、具合でも悪いの?」



 隣にいる翠先輩が、心配をしてくれた。

「いいえ。今日は大丈夫です」

「それならいいんだけど。――志貴くんたち、今日は遅いわね」

「前の時間が体育だからな。片付けでもしているんだろう」

「でも、今までこんなに遅いってことは無かったと思うわよ?」

 言われて、私は時計を見た。
 残りの休み時間は二十分。まだ余裕はあるけど、このまま来なかったら、今日はもう先輩に会う時間は無いんじゃないかと思えてきた。

「そうそう。二人とも、まだ重い物は持てないでしょ。だから、今日は資料のコピーをお願いね」

 聞けば、今日の仕事はそれだけらしく、終わればすぐに帰っていいと言われた。
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