Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
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放課後になると、紫乃ちゃんと一緒に生徒会室に行った。
すると、中には机につっぷしている賀来先輩の姿が。
「賀来先輩、どうしたんですか?」
声をかければ、先輩は背伸びをしながら体を起こした。
「ちょっと疲れただけ。ってか、真白ちゃんのカレシ、人使い荒いよねぇ~」
? 梶原先輩、何をさせたんだろう。
「ま、オレも話しに乗ったから、悪くは言えないけどさ」
話に乗った?
一体、何の話をしてるんだろう?
「紫乃ちゃんは、これからオレと翠ちゃんのとこに合流。真白ちゃんは、しばらくここで待ってて」
「仕事、変わったんですか?」
「わがままカレシ君のおかげでね」
「誰が我ままだ」
振り向けば、いつの間にか梶原先輩が後ろに立っていた。
「さっさと浅宮のとこへ行け」
「はいはい。んじゃ紫乃ちゃん、行こっか」
さっと、賀来先輩は紫乃ちゃんが手にしている荷物を取る。いいからと言うのも気にせず、先輩は荷物を持ったまま、会室を出て行った。
「藤原、お前も早く行け」
「わ、わかってるわよ!」
少し恥ずかしそうにしながら、紫乃ちゃんも会室から出て行った。
あんなふうにさらっと荷物とか持たれたら、紫乃ちゃんうれしいだろうなぁ~。
普段は自分が女子にやってるんだから、たまにはしてもらわないとね。
「真白、仕事はこれだ」
手にしていた資料を並べると、これを一枚ずつ順番に取りまとめるようにと言われた。
「資料のコピーは――」
「それがこれ」
ってことは――先輩が代わりに?
「すみません。先輩にやらせてしまって」
「気にするな。これ、二十部頼む」
先輩は別の仕事があるようで、パソコンに向かい作業を始めた。
「――――」
「――――」
こういう姿、初めて見る。
今まで作業中の先輩を見たことは何度かあるけど――。こうやって二人きりなんて、なんだか緊張しちゃう。
「――――」
「――――」
パソコンを打つ音が、会室に響く。
先輩の方を見れば、こちらに背を向け画面に集中している。その姿は、なんだかカッコよく見えた。
黙々と作業を続ける先輩に、私も集中しなくちゃと作業を続ければ、思ったより早く、資料の束が完成した。
終わったから……声、かけてもいいよね?
「――先輩」
呼びかければ、先輩は手を休め私を見た。
「資料、作り終えました」
「なら、ここに置いてくれ」
先輩の机を指され、そばに資料を置いた。
「オレもすぐ終わる。もうちょっと待っててくれ」
「はい、わかりまし――?」
「?――真白?」
なんだか……重い。
全身がダルくなり、よろけそうになったところを、先輩に支えられた。
「大丈夫か!?」
「は、はい――。ありがとうございます」
「んなことはいいから――ここで休んでろ」
さっと抱えられ、隣の部屋のソファーに寝かされた。
「今のは軽いので、座るだけでも大丈夫ですから」
「念の為だ。こっちの方がゆっくりできるだろう?」
まぁ、確かにゆっくりできるけど。
ここだと寝ちゃいそうで――。
「つーか、寝そうで悪いとかって思ってるのか?」
「っ!? べ、別にそんなこと――」
「顔に出てんだよ。んなこといいから、ここで寝てろ」
ぽんっ、ぽんっと頭を撫でると、先輩は部屋を出た。
せっかく寝かせてくれたんだし、このままで待っていよう。
早く治まらないと、一緒に帰れなくなりそうだもんね。
――そういえば。
先輩……嫌な顔、しなかった。
目の前でなったのに、いつもと変わらないし。