Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

 ◇◆◇◆◇

 放課後になると、紫乃ちゃんと一緒に生徒会室に行った。
 すると、中には机につっぷしている賀来先輩の姿が。

「賀来先輩、どうしたんですか?」

 声をかければ、先輩は背伸びをしながら体を起こした。

「ちょっと疲れただけ。ってか、真白ちゃんのカレシ、人使い荒いよねぇ~」

 ? 梶原先輩、何をさせたんだろう。

「ま、オレも話しに乗ったから、悪くは言えないけどさ」

 話に乗った?
 一体、何の話をしてるんだろう?

「紫乃ちゃんは、これからオレと翠ちゃんのとこに合流。真白ちゃんは、しばらくここで待ってて」

「仕事、変わったんですか?」

「わがままカレシ君のおかげでね」

「誰が我ままだ」

 振り向けば、いつの間にか梶原先輩が後ろに立っていた。

「さっさと浅宮のとこへ行け」

「はいはい。んじゃ紫乃ちゃん、行こっか」

 さっと、賀来先輩は紫乃ちゃんが手にしている荷物を取る。いいからと言うのも気にせず、先輩は荷物を持ったまま、会室を出て行った。

「藤原、お前も早く行け」

「わ、わかってるわよ!」

 少し恥ずかしそうにしながら、紫乃ちゃんも会室から出て行った。
 あんなふうにさらっと荷物とか持たれたら、紫乃ちゃんうれしいだろうなぁ~。
 普段は自分が女子にやってるんだから、たまにはしてもらわないとね。

「真白、仕事はこれだ」

 手にしていた資料を並べると、これを一枚ずつ順番に取りまとめるようにと言われた。

「資料のコピーは――」

「それがこれ」

 ってことは――先輩が代わりに?

「すみません。先輩にやらせてしまって」

「気にするな。これ、二十部頼む」

 先輩は別の仕事があるようで、パソコンに向かい作業を始めた。

「――――」

「――――」

 こういう姿、初めて見る。
 今まで作業中の先輩を見たことは何度かあるけど――。こうやって二人きりなんて、なんだか緊張しちゃう。

「――――」

「――――」

 パソコンを打つ音が、会室に響く。
 先輩の方を見れば、こちらに背を向け画面に集中している。その姿は、なんだかカッコよく見えた。
 黙々と作業を続ける先輩に、私も集中しなくちゃと作業を続ければ、思ったより早く、資料の束が完成した。
 終わったから……声、かけてもいいよね?

「――先輩」

 呼びかければ、先輩は手を休め私を見た。

「資料、作り終えました」

「なら、ここに置いてくれ」

 先輩の机を指され、そばに資料を置いた。

「オレもすぐ終わる。もうちょっと待っててくれ」

「はい、わかりまし――?」

「?――真白?」

 なんだか……重い。
 全身がダルくなり、よろけそうになったところを、先輩に支えられた。

「大丈夫か!?」

「は、はい――。ありがとうございます」

「んなことはいいから――ここで休んでろ」

 さっと抱えられ、隣の部屋のソファーに寝かされた。

「今のは軽いので、座るだけでも大丈夫ですから」

「念の為だ。こっちの方がゆっくりできるだろう?」

 まぁ、確かにゆっくりできるけど。
 ここだと寝ちゃいそうで――。

「つーか、寝そうで悪いとかって思ってるのか?」

「っ!? べ、別にそんなこと――」

「顔に出てんだよ。んなこといいから、ここで寝てろ」

 ぽんっ、ぽんっと頭を撫でると、先輩は部屋を出た。
 せっかく寝かせてくれたんだし、このままで待っていよう。
 早く治まらないと、一緒に帰れなくなりそうだもんね。



 ――そういえば。



 先輩……嫌な顔、しなかった。
 目の前でなったのに、いつもと変わらないし。
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