Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
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夢の中、私は誰かと歩いていた。
それが徐々に、中学の時だというのがわかってくる。
辺りは日が暮れていて、学校からの帰りを、男子と一緒に歩いていた。
『オレの家、寄らない?』
その言葉に、私は戸惑いの言葉をもらす。
だって、今遊びになんて行ったら……。
あまり体調がよくないことを伝えると、相手は、それなら余計に家に来たらいいと誘う。迷いがあったものの、このまま行けば、途中で倒れてしまいそうな気がして。
――だから、私はその誘いを受けた。
相手は私の体のことを把握しているし、家には親がいるとのことだったから。
それに付き合っていれば、家に行くことぐらい当然だろうし。
正直、怖い気持ちがあったのに。
けれど、それを口には出来ないまま……家へと、歩いて行った。
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目が覚めると、そこは自分の部屋。
時計を見れば、朝の午前五時を回っていた。
今度は長く眠ってしまったなぁと、ぼぉーっとする頭で考える。
少しおなかが空いていたものの、まだ体がダルいこともあり、しばらくベッドでごろごろと過ごす。
気が進まないけど……行かなくちゃ、だよね。
学校へ行く準備をしていると、思わずため息がもれる。
生徒会の仕事はいいけど、会長の言っていた禁止令が、心に重くのしかかっていた。
「真白……? 何か、あったの?」
登校中、様子が違うのを察してか、紫乃ちゃんが心配そうに声をかけてくる。それに私は、昨日あったことを(会長のことは避けて)話をした。
「よし、じゃあ私が書記になるから。それなら安心でしょ?」
「でも……付きあわせちゃって、いいの?」
「いいのいいの。――見張らなきゃだしね」
「? 何か言った?」
「ううん、気にしないで。じゃあ、直接先生に言うことにするね」
ここまで甘えてしまうのは悪いと思ったけど、正直、紫乃ちゃんがいてくれるだけで心強い。
紫乃ちゃんは、私にとって憧れの存在。
しっかりとして、凛とした堂々さがあって。
肩まである黒髪が、余計に大人っぽい雰囲気をかもし出しているように見える。
紫乃ちゃんは自覚なんてないみたいだけど、結構人気がある。でも、現在紫乃ちゃんはフリーな状態。理由は紫乃ちゃん曰く――今の男子は軟弱だ! とのことで。だから作る気にはなれないらしい。
自分らしさを貫くそういうところが、格好よく見えるんだよね。
「本当にありがとう。紫乃ちゃんと一緒なら心強いよ」
「仕事がうまくできるかはわからないけどねぇ~。その時はよろしく!」
またそんなこと言って。
なんだかんだでうまくできちゃうのが紫乃ちゃんじゃない。
これで少しでも気が楽になるかもと、生徒会の仕事をするのが、少しは楽しみに感じられた。