Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

「ほら――もっとそばに来い」

 横向きになり向かい合わせになると、隙間が無いほど、体がぎゅ~っと抱きしめられた。

「こっ、ここ……保健、室」

「だからいいんだろう? ベッドがあるから、寝っ転がっても問題無い」

 いや、問題はそこじゃなくて!
 今、こうしていること自体問題なのでは!?

「…………」

「嫌なら言え。無理やりはしないって、約束しただろう?」

 ふふっ、と小さな笑いが耳元で聞こえる。
 嫌とか、そういうことじゃなくて……。

「まーしーろ。――ふぅ~」

「っ!?」

「やっぱ、耳弱いのな」

 こ、こうやって悪戯されるのが恥ずかしくて。
 嫌とか、そういうことを考える暇がない。

「せ、先生が……くるっ、から」

 なんとかそれだけを言い、下を向く。
 すると、左側の髪がかき上げられた。

「なら、来なけりゃいいってことか? ん?」

 ゆっくり、先輩の手が髪を撫でていく。時々指先が耳に触れ、私の反応を楽しんでいるのか、楽しそうな笑い声が聞こえた。

「キスしてねぇーのに、今日はやけに反応するな?」

「だ、って……」

 保健室で。しかも、一緒のベットにいるんだから、緊張しないはずがない。いつも以上に心臓はドキドキして……もう、頭がぼぉーっとしちゃう。



「――――真白」



 甘い声が、私を呼ぶ。
 自然と顔が上がり、先輩と視線を合わせた。

「その顔……そそる」

 ニヤリ怪しい笑みを浮かべると、先輩の顔が、徐々に近付いてくる。目をつぶり待っているれば、

「…………?」

 なぜか、キスをする気配が感じられない。
 目を開ければ、先輩は目を閉じ、大きく深呼吸をしていた。
 抱きしめた腕を放すと、先輩は無言で起き上がった。

「……せん、ぱい?」

 私も起き上がるり、おそるおそる声をかけた。
 もしかしたら何かしたんじゃないかという不安が、心を埋め尽くしていく。

「悪い悪い。今キスなんてしたら、うつっちまうからな」

「――うつる?」

「ちょっと熱があってな。ただでさえ藤原からうつるかもしれねぇーのに、キスなんてしたら一発だろう?」

 な? と、頭をくしゃりと撫でられた。

「熱だなんて、今は大丈夫なんですか?」

「あぁ、調子いい。からかう元気もあっただろう?」

「た、確かにそうですけど」

 本当は、無理してたりするんじゃ……。

「――先輩」

「ん、っ!?」

 額に手を当て、熱を確認してみた。
 熱い感じはしないし――とりあえず、表面的には大丈夫そう。



「……せっかく離れたってのに」



 先輩との距離が縮まり、顔が間近に迫ってくる。

「そんなにうつしてほしいのか?」

 艶やかな声。
 獲物を追い詰めるような眼差しに、視線がそらせない。

「どうしてお前は、こうも煽るのが上手いんだ?」

「そ、そんなつもりは……」

「拒否しねぇーと、激しくするぞ?」

「え、っと……?」

 あれ、拒否しないと激しくってことは――。

「拒否してもキスはする、ってことなんじゃ」

「――正解」

 呟くと同時、唇が押し当てられた。

「んんっ……、っ」

「はぁ、……っ、ふぅ」

 珍しく、先輩の息が荒い。
 夢中で続ける先輩にいつもの余裕は無く。ただ貪るように、本当に激しい行為が繰り返された。
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