Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

 ゆっくり寝てもらおうと自分の部屋に戻ると――ふと、足下に目がいった。
 珍しい。手紙が配達されるなんて。
 普段は集合ポストに入ってるものなんだけど――!?
 手にした途端、思わず息をのんだ。手紙だと思ったそれは写真で――私の、下着姿が写っていた。
 これ、って……。
 盗撮なんてもんじゃない。
 至近距離から服をめくられてて、しかもそれは、今日着ている下着。



「――――準備、室」



 撮られるとしたら、そこしかない。
 倒れた隙にされたらわからないし、もしかしたら……。
 急いでお風呂場に行き、服を脱いで鏡を見た。



「っ!……あ、ぁう」



 ……され、てる。



 鎖骨にそって、覚えのない痕が幾つも目につく。それは虫刺されのような、小さな赤い痕をしていた。
 途端、体から力が抜けていった。
 知らない人、に……された。
 もしかしたら、裸の写真もっ!



「はっ、ぁ……はっ、はっ……」



 息の仕方がわからない。
 今のことが理解できない……いや、したくない。
 頭も心も、浮かぶのは拒絶だけ。



 もう……起きていたくない。



 早く寝てしまおうと、着替えるとすぐ、ベッドに体を預けた。
 でも、こんな時に限ってなかなか寝付けない。
 しばらく寝がえりをうっていれば――ふと、携帯が光っているのが見えた。



 ……きっとまた、嫌なメールだ。



 携帯をそのままにし、ただ、寝ることに意識を向けた。

 *****

 寮に帰ると、藤原に生きてるかぁ~? と、メールを入れた。するとメールでなく、電話がかかってきた。

「何かあったのか?」

『それはこっちのセリフ。今日の真白、変わったことなかった?』

「いつもみたいに倒れたが、それ以外はねぇーな」

『あぁ~なら返事が無いのも納得』

「連絡つかないのか?」

『そーいうこと。カギあるから開けて見たけど、チェーン掛かっててね。でも、中にはいるみたい。靴があったし』

「……ちゃんとした場所で寝てりゃあいいが」

『部屋の中なら大丈夫よ。その辺にクッションたくさんあるから』

 言われて、真白の部屋を思い浮かべた。
 そういえば、ベッド周りは特に多かった気がする。

『とりあえず、学校で何も無いならよかったわ。私のがうつったのかと思っちゃった』

 あー…。それはなんて言うか。
 もし、連絡がつかないのがいつものこと以外だったとしたら。

「その場合……オレの原因もありそうだ」

『あ、やっぱりあんたもひいてた?』

「熱がちょっとな。今はだいぶいい」

『毎度のことだけど、こーいうところまで似ちゃうのねぇ~』

「ま、いつものことだ」

 オレたちの両親は双子同士。だから育て方や習慣なんかも全く同じで、こうして同じタイミングで具合が悪くなるのも、実は珍しくない。

『ま、そっちも気を付けて――?』

「――藤原? おい、何かあったのか?」

『いや、何って言うか……』

 声のトーンが低い。
 いつもと違う様子に、オレは正直に話せと言った。
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