Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

「でなきゃ――隼人行かせるぞ?」

『ちょっ、先輩に迷惑かけないでよ!』

「なら早く言え。今――何があった?」

『……先輩には言わないって、約束できる?』

「必要なら話す、ってことしかできねぇーな」

『……ま、あんたなんだかんだ言っても、約束は守ってくれるし。――――写真が、届いてたの』

 聞けば、わざわざドアに付いてあるポストに、写真が入れられていたらしい。
 写っていたのは着せ替え人形で、髪の毛と服がぼろぼろ。そして裏には、

『また……同じ目に合いたくないでしょ? って』

 脅迫と取れる言葉が書いてあった。

「〝また〟ってことは、送り主はあの時と同一人物か、誰かから聞いて知ってるやつなのか――」

『ねぇ、先輩にはまだ言わないでよ? こんなの聞いたら……今度こそ、本当に殺しちゃう』

「あぁ。とりあえず今は黙ってておく」

 あいつのことだから、黙ってても嗅ぎつけてそうだが――。
 ま、そうなった場合、オレが言ったわけじゃないからいいか。
 話が終わると、今度は真白にメールを送った。
 藤原の言ったとおり、いつまで経っても返事は来ない。電話も反応は無く、これは本当に寝てるんだろうなと思い、それから携帯を見ることはしなかった。

 ◇◆◇◆◇

 時計を見れば、朝の四時過ぎ。
 あまりにも早い目覚めだと自分でも思うけど、今からまた寝るってこともできそうにない。
 そういえば――昨日から、食べてなかった。
 お昼から食事をしてないことを思い出し、軽くつまもうと台所に行った。
 寝過ぎたのかなぁ……なんか、ぼぉーっとする。
 インスタントのコーンスープを作り、テーブルに置く。
 腰を下せば、体がどっと重くなるのを感じた。
 これって……風邪、かなぁ?
 だとしたら、動けるうちに準備しないと。
 飲み物をベットのそばに置き、薬や冷えピタを揃えた。



「――――あっ。チェーン」



 掛けたままだったのを思い出し、玄関へ足を運ぶ。そこまで距離はないのに、のろのろとしか足は進まない。
 これって……紫乃ちゃんの、かな?
 段々熱が上がっていくようだし、紫乃ちゃん風邪だとしたら、酷いことになるんじゃないかと過った。
 ようやくベッドに戻ると、すぐに解熱剤を飲んだ。
 これで、少しはマシになってくれればいいけど……。



「――――れん、らく」



 携帯を手にすれば、そこには紫乃ちゃんと梶原先輩からの連絡が入っていた。二人に謝りのメールと、どうやら自分も風邪をひいたらしいということを送る。
 これで、やることはやり終えた。
 あとは眠ってしまえばいいけど――やっぱり、眠気はまだきてくれない。



 今日は……休まなきゃ、いけないんだよね。



 それがうれしいような、怖いような……複雑な気分。
 徐々に淋しさが込み上げ、あまりにも淋しくなった私の手は、自然と先輩に電話をかけていた。



 ……出るはず、ないのに。



 こんなことしたら迷惑だ。
 あぁ~……もういやっ。

 ――――――――――…
 ――――――…
 ―――…

「やっぱりうつちゃったかぁ。ごめんね、真白」

「藤原、熱はどうなんだ?」

「ん~とね――わっ、昨日の私並みじゃん」

 そばで、二人の声がする。
 聞いていれば、紫乃ちゃんと梶原の先輩の声だというのがわかった。
 でも、風邪プラスいつもの症状があるのか、意識があるのに起きることができない。
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