Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
*****
真白の部屋に入るなり、オレは玄関先で後ろからハグをした。中に入ってからと思ったが、ちょっと我慢ができなかった。
「せ、先輩っ。くっつくなら部屋で……」
こうして慌てる真白を見るのは面白い。それだけオレを意識してるってことだから、うれしくて堪らなくなる。
部屋の奥に行くと、飲み物を用意するからと言い、真白はキッチンへ向かう。
持って来たのはコーヒー。ちゃんとオレのはブラックで淹れてくれている。
「真白は、ブラックだと飲めないのか?」
「そうですね。苦いのはちょっと。でも、ミルクと砂糖があれば飲めますから」
「藤原にも聞いたが、他に嫌いな物とかないのか?」
「えっと。苦いものは苦手ですね。あとは、お漬物なんかもあまり。――先輩はどうなんですか?」
「オレか? オレはこれと言って無いな。だから、どんな物でも食えるぞ」
まぁ、真白が作ってくれるなら、苦手でも食べようって思うけどな。
コーヒーを飲みながら、日曜の話をする。パンケーキのお店以外に行きたい場所はないのかと聞けば、今は特にないらしい。
こういう時、隼人みたいにバイクでも持ってればよかったんだがな。そうしたら、二人でちょっと遠出とか出来たんだが。
「それなら、その後の行先はオレに任せてもらえるか?」
「先輩も、行きたい場所があるんですか?」
「オレが行きたいって言うか、真白を連れて行きたいんだよ」
藤原から、真白はゆっくり景色を眺めたり、神社に行くのも好きだと聞いた。だからオレは、夕日が綺麗に見える海辺に連れて行きたいと思った。
「場所は、当日のお楽しみな?」
そう言って頭を撫でれば、真白は恥ずかしそうに頷いてくれた。撫でている手を肩へと移動させ、真白を引き寄せる。まだ恥ずかしそうだが、前のように離れようとはしない。ようやく、オレに慣れてきたって感じか?
「なぁ真白。もっとくっつきたいんだが――いいか?」
「わ、私もくっつきたい、ので」
「なら、オレの膝に来い」
そう告げれば、真白は横向きにオレの膝に座った。しかも今日は、首に手まで回してくる。こうまで密着されると思ってなかったから、ちょっと驚いてしまった。
「どうした? 今日はやけに甘えるな」
「そんな日も、たまにはあるんです」
「たまになのか? オレとしては、いつもこうだとうれしいんだがな」
背中に腕を回し、真白を抱きしめた。髪からシャンプーなのか、いい匂いがする。真白のこの匂いは、心地よくていい。こうして抱きしめてるのもいいが、やっぱりそれ以上を求めてしまう。
「――なぁ、真白」
腕を緩め、真白の顔を見る。
「――キスは、ダメか?」
答えを待っていると、ダメじゃない、という言葉が聞こえた。
「あと、たまには真白からしてほしいんだが――ダメか?」
「っ! そ、それはさすがに」
「まだ恥ずかしいのか?」
「自分からは、まだ……」
「じゃあ、今日もオレからしてやるか」
告げてすぐ、オレは真白の唇を奪った。
真白はオレの首に手を回してきて、それが余計、うれしく思えた。
ついばむようなキスを何度か繰り返し、今度は、舌を絡める深いキスをしていく。
「…っ。せん、ぱっ」
もれる声すら飲み込むほど。オレはこの行為に溺れていた。だが、これ以上は真白が苦しがりそうだ。吸い付くようなキスをし、首元へと唇を移動させる。
「く、くすぐったいっ、から」
「やっぱり、お前はここが弱いな」
最後に、首元にキスをして終わりにした。
キスのあとの真白は目が潤んでいて。本当、これ以上は求めないって決めてるのに、その姿に欲情してしまう自分がいた。
「いつかは、お前からしてくれよ?」
そう言って、軽いキスを唇に落とした。
「もっとくっつきたいが、今日はこれで帰るかな」
時間を見れば、もうすぐ六時になろうとしている。
珍しく離れない真白に、オレはまた明日があるからと言い、頭を撫でた。