Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
◇◆◇◆◇
――あれから数日。
学校では、特に問題もなく過ごせていた。委員会の仕事も順調で、今日はついに、先輩とのデートの日を迎えていた。
「――ん~。こっち? それともこれ、かな?」
今日の服装はどうしようと、昨日から迷っていて。今は、パンツスタイルにするか、ワンピースにするかで迷っていた。
「可愛い感じならスカートだけど、パンツも捨てがたいんだよなぁ」
初めてのデートだからってのもあるけど、なんだか気合いが入ってしまう。
「――よし。今日はワンピースで行こう」
上着は空色で、ジーンズ生地のジャケットを羽織り、ワンピースには真っ白なストレートタイプを選んだ。あまりひらひらしたのは好きじゃないので、結構スッキリなスタイルになってるかな。
「いけない! 早くしなくちゃ」
胸元まである髪を緩く巻いて、お化粧は――軽く、アイラインを引くぐらいでいいよね。最後にマスカラとリップを塗り、全身のチェックをする。
「――よし。これならいいよね」
靴はスニーカーにして。うん。これなら動きやすい。
カバンを手に持ち、私は、玄関を出た。早く会いたくて、私は走っていた。先輩とは、十二時に駅前の銅像で待ち合わせとなっている。時計を見れば、約束の時間までまだ十五分もあった。先輩、もう居るかなぁ?
銅像に近付いていくと、そこにはもう、先輩の姿があった。
「――す、すみません! 待たせちゃって」
急いで向かえば、先輩は、今来たところだからと笑ってくれてた。
「そんな急がなくていいんだぞ? 疲れただろうに」
「だ、大丈夫です。早く、会いたいなって思ったから」
そう告げれば、先輩は片手で顔を覆い、そっぽを向いていた。
「ったく。どこまで可愛いんだか」
「へ?」
「あんまカワイイこと言うな。抱き着きたくなるだろうが」
「そ、そんなこと言われても……。会いたいって思ったのは、事実なので」
「ったく。それ以上言わなくていいから。――服、似合ってるな」
そう言って、先輩は私の頭を撫でてくれた。
「せ、先輩も……カッコいい、です」
私のジャケットよりも少し濃いめの青色で、同じジーンズタイプの生地。インナーは白で、パンツは濃いめの灰色。高身長なのもあってか、シンプルな素材なのにいやに似合っている。それに――。
「ジャケット。お揃いみたいで、なんかうれしいです」
そう言って微笑むと、先輩は人目もはばからず私を抱きしめた。
「ちょっ! 先輩!」
「お前がカワイイことばっか言うからだ」
「だからって、こんな街中でっ」
「少しぐらいいいだろう?――ほら、店に行くぞ」
そう言って、先輩は私の左手を握り歩き始めた。
周りを見れば、私たちを見ている人がちらほらと居て。私は恥ずかしくて、しばらく俯いたまま歩いていた。
「――やっぱ、人気が出てるみてぇーだな」
お店に到着すると、そこには長蛇の列が。今からだと、最低でも一時間はかかるみたい。
「オレは並んでもいいが、どうする?」
「先輩がいいなら、せっかくなので行ってみたいです」
「OK。じゃあ並ぶか」
先輩に連れられ、列の最後尾に並ぶ。その間も、先輩は私の手を握ったままで。
「そう言えば、真白は体育祭の種目は決めてるのか?」
今こうしている時も、しっかりと握っているのがなんだかうれしい。
「私は借り物リレーと、短距離走です。先輩は何に出るんですか?」
「オレも借り物リレー。あとは、クラス対抗のリレー。これでも足は速い方だからな」
「なんか、先輩も借り物リレーなのは意外です」
「今回、借り物リレーの人が居なかったんだよ」
「そう言えばうちのクラスもそうでしたね」
「お前、無理やり押しつけられたのか?」
「いいえ。私も興味があったし、下手に体力使うものよりはいいかなって。紫乃ちゃんなんかは、先輩と同じでクラス対抗リレーに出るんですよ」
「アイツも足は速い方だからな。ってか、問題は借り物リレーのお題だ」
「? 何か問題でも?」
「去年のことだから覚えてないか? 好きな人に告白とか、好きな人を連れてくるとか。そういったお題があったんだよ」
そう言えば……そんなこともあった気がする。去年は違う種目に出てたから気にしなかったけど、今年もそんなお題が出たらどうしたらいいんだろう。