Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

「しかも、お題を作るのは体育委員。つまりは浅宮たちだ。去年好きな人系のお題を作ったのは、その浅宮なんだよ」

「それ、先生たちもよくGOサイン出しましたよね」

「まぁなんだかんだ言って盛り上がったからいいんだろうけどな。生徒からも特に苦情は来なかったし。誰のところに何が来るかわかんねぇーけど、特定のヤツに仕込もうと思えば仕込めるからな。その辺り、浅宮が気を使ったのかもしれねぇーけど」

「翠先輩って、そういう直感と言うか、この人にはどれぐらいのものがいいかとかって、わかっていそうな節がありますよね」

「そうなんだよ。アイツは昔から勘がいいって言うか。――あれは、敵に回したらダメな部類だ」

 はぁ~、とため息をつく先輩。これは本当に、何か弱みを握られているんだろうなって思う。

「お、メニューが回ってきたぞ。どれが食べたいんだ?」

 先輩が、メニューを見せてくれる。そこにはシンプルなパンケーキから、ふわふわのパンケーキ。フルーツたっぷりのパンケーキと、様々な物が載っていた。

「ふわふわのも気になりますけど……私は、フルーツのにしようかなと」

「じゃあ、オレがふわふわなの頼むか。そうすれば二つ食べれるだろう?」

「いいんですか? 先輩だって食べたい物とか」

「オレは特にこれってのが無かったからな。それなら真白が食べたいやつにした方がいいだろう?」

 こういうさらっと気を使ってくれるところが、先輩のいいところだよね。

「飲み物はどうする?」

「じゃあこの、3Dラテアートを」

「OK。じゃあその二つで決まりだな。――これ、どうぞ」

 先輩が、後ろの人へメニューを回す。
 それから十分程待っていると、お店へ入れた。案内されたのは、奥のテーブル席。先輩がさっそく注文をしてくれて、私は料理が運ばれてくるのを楽しみに待っていた。



「――お待たせしました! こちら、天使のパンケーキとフルーツパンケーキ。コーヒーのブラックに、3Dラテアートです。以上でお揃いでしょうか?」



 それに返事を返す先輩。目の前には、メニューで見たよりも豪華なパンケーキが。
 そして、3Dラテはクマの形をしていて。それがまた可愛くて、私は思わず写真を撮っていた。

「あ、すみません! 食べる前に写真撮って……」

「んなこと気にすんな。それだけうれしかったんだろう? ほら、食うぞ」

 そう言って、先輩はパンケーキを半分に分けて食べ始めた。
 私はというと、ラテを飲もうかと思ってるんだけど、このクマを壊しちゃうのがもったいない気がして。カップを揺らして、クマが揺れるのを楽しく見ていた。

「真白は、SNSやってるのか?」

「一応やっていますが、ほとんど動かしてないですね」

「そっか。なぁ、嫌ならいいんだが――」

「どうかしたんですか?」

「真白のスマホに、位置情報アプリ入れてもいいか? お前、倒れることが多いし、何かあった時の為にと思ってな。もちろん、オレの位置も互いにわかるようにするアプリだ」

 そういうことなら、断ることはないだろう。

「いいですよ。先輩なら、変なことに使わないって分かってますから」

「ありがとな。――ほら、アイス溶けるぞ」

 言われて、私はパンケーキを目にした。
 上に乗ってるのはアイスと苺やキウイ、みかんやパイナップルと、本当にたくさんのフルーツが乗っている。

「先輩も、アイス食べますか?」

「いや、オレはいいよ。真白が食べな」

「じゃあアイスは食べちゃいますが、パンケーキは半分交換ですね」

 先輩のパンケーキは、厚さ5cmの二段重ね。バターとハチミツがたっぷりのパンケーキだ。
 思ったとおりふわっふわで、フルーツの方とはまった違った味わいで好きだった。

「思ったより甘さがくどくないな」

「ですね! これぐらいの量なら私でもいけそうです」

 そんなに食が細いってわけじゃないけど、ここのパンケーキは別腹って言葉が合いそうなぐらい。それだけペロッといけそうな味わいだった。

「それだけ楽しそうなら、誘ってよかった。――そろそろ行くか?」

 ラテを飲み干すと、先輩は次の場所へ行こうかと言う。
 立ち上がると、先輩は先に会計を済ませていて。私も半分出すと言ったけど、初デートぐらい奢らせろ、とのこと。申し訳ないとは思ったけど、聞き入れてもらえなさそうなので、今はその行為に甘えることにした。
 この後は、どこに行くか分からないから完全に先輩任せ。どこに向かうのかと思えば、先輩は店を出るなりまた手を繋いできて、こっちだと言い駅の方へ向かって行った。
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